ノートパソコンの購入で失敗しないためのメモリ・ストレージ性能の見方のポイント
この記事で解決できる問題点・疑問点
  • パソコンを購入するときのメモリやストレージ性能の見方のポイントが知りたい。
  • 使用目的や用途にあったメモリやストレージがどれか知りたい。
  • メモリのスペックにでてくるPCIeやNVMe、SATA、DDRといったワードが何を意味しているのか知りたい。

この記事では、上記のような質問に答える形で、
パソコンのメモリやストレージについて、その性能の見方のポイントから使用用途別のおすすめメモリ・ストレージまで詳しく解説しています。

また、その他のPCパーツであるCPUやGPUについては以下のページで紹介しているので興味がある方はそちらも参考にしてください。

メモリとストレージの違い

PCの仕様などの表を見ると、メモリとストレージそれぞれの記載があることを確認できると思います。

スペック例
商品名mouse X4-R5
価格(税込み)124,800円
OSWindows 11 Home 64bit
CPUAMD Ryzen™ 5 5560U プロセッサー
バッテリー駆動時間約 10.0時間
グラフィックスAMD Radeon™ グラフィックス
メモリー16GB (16GB×1)
システムストレージ512GB (NVMe対応)
無線ネットワークインテル® Wi-Fi 6 AX200 (最大2.4Gbps/ IEEE802.11ax/ac/a/b/g/n) + Bluetooth 5モジュール内蔵
ディスプレイ14.0型 液晶パネル(ノングレア)
WEBカメラ100万画素
Windows Hello 顔認証カメラ搭載
質量約 1.17kg

このメモリとストレージはともに、「コンピュータの記憶装置(データの保存領域)」です。

では、なぜコンピュータには2種類もの記憶装置が必要なのでしょうか?

その理由は、メモリとストレージそれぞれの記憶装置の特徴を理解すれば分かります。以下では、それぞれの特徴・役割について説明していきます。

メモリとは?

パソコンのスペック表に記載されているメモリとは、一般的には「メインメモリ」のことを指します。メインメモリには、コンピューターの中で現在頻繁に使用している情報やそのデータをどのように処理するかを指示するプログラム(命令列)が格納されています。つまり、メモリはCPUと直接データのやり取りを行う1次記憶装置としての役割を果たしています。

また、メモリはRAMとも呼ばれます。RAMとは、random access memory(ランダムアクセスメモリ)の略で、メモリに格納されている情報がどこの位置にあっても、どの情報にも同じくらい早くアクセスできるというところからきています。簡単に言うと、メインメモリ(RAM)に格納されている情報であれば、どの情報に対しても迅速に辿りつくことができるということです。

しかし、メモリには揮発性という特性があり、電源を切ると現在メモリに格納されている情報はすべて失われるようになっています。電源を切っても情報を保持し続けるためには、メインメモリとは別にストレージのような2次記憶装置が必要です。

ストレージとは?

ストレージとは、データを長期格納するための2次記憶装置です。メモリとは異なり。不揮発性という特性があり、PCの電源を切ってもデータを保持し続けることができます

つまり、パソコンのCPUは、すぐにデータにアクセスできる短期記憶のメモリと永続的にデータを保存できる長期記憶のストレージを効率的に使い分けることで、最適なパフォーマンスを実現しているといえます。

ストレージには従来、ハードディスクと呼ばれる磁気記憶装置が用いられていました。今でも中古のノートパソコンや安価なノートパソコンでは、磁気記憶装置が用いられています。この磁気記憶装置の問題点は、メインメモリと比べて読みこみ速度が遅いという点です。そのような問題点を改善するために、今では磁気記憶装置より高価なSSDと呼ばれる記憶装置が用いられるようになってきました。

SSDとは、半導体ディスク(Solid State Disk)の略で、従来ストレージとしてよく使われていた磁気記憶装置の代わりになる「より高速で信頼性の高い2次記憶装置」です。もちろん不揮発性で電源を切っても情報を保持し続けることができます。また、磁気記憶と比べると値段が高いという点も特徴です。

特に、動画や3DCGなどの大規模なデータを扱う場合は、SSD搭載のノートパソコンがおすすめです。

メモリとストレージの違い まとめ

メモリとストレージの一般的な違いは以下のようになります。

メモリストレージ
アクセス速い遅い
特性揮発性
電源を落とすとデータが消える
不揮発性
電源を落としても記憶を保持
価格高い安い

ただし、最近では上述したSSDのようなストレージが登場しており、高い性能を持ったストレージもでてきています。

メモリ性能の見方

上述しているように、メモリとはコンピューターの中で現在頻繁に使用している情報やデータを格納しておく短期記憶領域のことです。

このメモリの読み込み速度や遅かったり、容量が小さかったりすると、現在行っている作業に直接影響を与えてしまいます。

ここでは、そんなメモリのスペックをどうやって見極めれば良いのかを詳しく解説しています。

メモリの性能を判断するうえで重要なポイントは「規格」「容量」です。

メモリの規格について

パソコンのスペック表でメモリの項目を見ると、DDR〇〇といった表記を確認することができます。このDDR〇〇という記号が、メモリの規格を表しており、メモリの性能を見極めるうえで重要なポイントとなります。

メモリの規格で現在主流なのは「DDR4 SDRAM (DDR4)」で、その1世代前の規格が「DDR3 SDRAM (DDR3)」、さらにその1世代前の規格がDDR2 SDRAM (DDR2)という規格になっています。

中でも、DDR4-2666、DDR4-3200、DDR4-3600あたりの規格が良く利用されています。参考までに、詳しいDDR4の規格を以下にまとめているので興味がある方は見てみてください。

世代メモリチップ規格メモリモジュール規格転送速度(GB/s)メモリクロック(MHz)バスクロック(MHz)ピンの数
DDR4DDR4-1600PC4-1280012.8100800288
DDR4DDR4-1866PC4-1490014.9116933288
DDR4DDR4-2133PC4-17000171331066288
DDR4DDR4-2400PC4-1920019.21501200288
DDR4DDR4-2666PC4-2133321.31661333288
DDR4DDR4-3200PC4-2560025.62001600288
DDR4DDR4-3600PC4-2880028.82261800288
DDR4DDR4-4266PC4-3410034.12662133288

※転送速度が早ければ早いほど処理能力が高いということになります。

 DDR(Double Data Rate)とは?

メモリ規格のDDR4とDDR3に共通する「DDR」とは、Double Data Rateの略称です。

これは、SDR(Single Data Rate)メモリに対応した名称で、SDRメモリが1回のクロック信号で1回のデータ転送を行うのに対し、DDRメモリは1回のクロック信号で2回のデータ転送を行うことができるということを表しています。つまり、SDRメモリに比べてDDRメモリは単純に2倍の速さでデータ転送を行うことができます

メモリの規格の注意点

メモリの規格で注意が必要な点は、異なる規格のメモリ間で互換性が存在しないという点です。例えば、DDR4のピンの数は288本、一世代前の規格であるDDR3はピンの数が240本です。このため、DDR3を挿していたマザーボードにDDR4を挿しこんで利用することはできませんし、その逆も同様です。

メモリの容量について

メモリの容量は、パソコン作業の快適性に直結します。容量は大きければ大きいほど良く、2GBより4GB、4GBより8GB、8GBより16GBの方がもちろん快適です。

メモリの容量は、例えるなら作業机です。机の作業スペースが広ければ広いほど様々な作業を同時にこなすことができます

机の上

特に、デザインや動画編集といったクリエイティブな作業では、常に多くのファイルを開いた状態で作業を進めていくことが多いのでこのメモリの容量は重要です。

ちなみに、メモリが机の上のスペースだとしたら、ストレージは引き出しや本棚の中のスペースといえます。

ストレージ性能の見方

上述しているように、ストレージにはハードディスク(磁気記憶ディスク)とSSD(半導体ディスク)の2つの種類があり、現在はSSDが主流となっています。ここではまず、規格から説明していきます。

ストレージの規格

SSDには大きく分けて2つの種類があります。SATA(SATA SSD)NVMeです。ちなみに、メモリの規格と同様に、規格が異なると互換性がなく、SATA SSDやHDDが搭載されているPCにNVMeのSSDは搭載できません。なぜならば、データの通り道が違うからです。

satanvme

SATA

SATAとはSerial ATA()の略で、PCにハードディスクや光学ドライブを接続するための規格です。このSATA規格の登場によりいっきにハードディスク(HDD)が普及しました。パソコンだけでなく、テレビ用のHDDレコーダーなどの普及にも大きく貢献しました。

しかし、SATA規格では通信プロトコルの問題などがあり、SSDの性能を最大限発揮することはできませんでした。そこで新たに登場したのがNVMe規格です。

NVMe

NVMeはNon-Volatile Memory Expressの略で、直訳すると不揮発性メモリのための規格になります。つまり、SSDに最適化された規格ということになり、SSDのパフォーマンスを最大限に発揮させることを目的として策定されています。

では、NVMeとSATAでは何が違うのでしょうか?

NVMeとSATAの違い

NVMeSATA
インターフェースPCI ExpressSATA
通信プロトコルNVMeAHCI
コマンドキュー65,536個1個
4KBデータの転送効率1フェッチ2フェッチ
速度8GB/s600MB/s

・ハードウェア インターフェース

NVMeのハードウェアインターフェースはPCI Express、SATAのハードウェアインターフェースはSATAになり、最大転送速度が大きく異なります。

SATAの転送速度が6Gbps (600MB/s) に対して、NVMe SSDで現在最も主流なPCIe Gen4 x4レーンでは64Gbps (8GB/s) となり、10倍以上の差があります

つまり、PCIe Gen4 x4レーンを採用したNVMe SSDは、SATA SSDと比べて10倍以上の処理能力があるということになります。

・通信プロトコル

通信プロトコルは、SATAのAHCIからNVMeになったことで、コマンド処理のためのQueueが1個から65,536個に桁違いに向上しています。これは、同時に大規模なデータ処理をするようなシステムで、処理の高速化が可能であるということを表しています。

・その他

SATAでは、4KBデータの転送時に2フェッチ必要でしたが、NVMeでは1フェッチで行えるようになり、データへのアクセス効率も上昇しています。

ストレージの容量

ストレージの容量は、単純にどれだけ多くのデータをパソコンの中に保存しておけるかということを表しています。最近では、ノートパソコンでも1TBや2TBといったかなり大きな容量のものもでています。

ただし、ストレージはあくまでも2次記憶装置でデータの保存場所であるため、持ち運び性能などを優先したい場合は、そこそこの容量のストレージにして、大きなデータは外付けのストレージに保存するといった選択をすることもできます。

 

メモリ・ストレージ性能の見方 まとめ

メモリ

メモリ性能の見方のポイントは、規格容量の2つです。

規格については、以下の表を性能比較の目安にしてください。

メモリチップ規格転送速度(GB/s)
DDR4-426634.1
DDR4-360028.8
DDR4-320025.6
DDR4-266621.3
DDR4-240019.2
DDR4-213317
DDR4-186614.9
DDR4-160012.8

メモリの容量については、以下に用途別のおすすめを載せておくので参考にしてください。

 用途別のメモリ容量の目安
  • ~8GB:事務作業(Microsoft office)、テレワーク(Zoom、Chatworks)
  • 16GB~:デザイン作業(Photoshop、Illustrator)、動画編集(Premire Pro)、設計業務(CAD)
  • 32GB~:3DCG制作、3DCAD、4K動画編集、オンラインゲーム
  • 64GB~:マイニング、機械学習

ストレージ

ストレージ性能の見方のポイントについても、規格容量の2つです。

SATA(HDD・SSD)規格は、比較的安価に手に入れることができる反面、NVMe(SSD)規格と比べると性能的に大きく劣ります。

用途にもよりますが、コストをとりあえず安く抑えたいのであればSATA処理速度を最優先するのであればNVMeを選ぶようにしましょう。

また、ストレージの容量については、持ち運び性能を優先するのか、それともノートパソコンをデスクトップパソコンのように使いたいのかといった用途や目的に応じて選ぶのがベストです。

 用途別のストレージ容量の目安
  • 250~500GB:事務作業(Microsoft office)、テレワーク(Zoom、Chatworks)
  • 500GB~:デザイン作業(Photoshop、Illustrator)、動画編集(Premire Pro)、設計業務(CAD)、3DCG制作、3DCAD、4K動画編集、オンラインゲーム
  • 1TBGB~:マイニング、機械学習

まとめ

この記事では、パソコンのデータ保存領域であるメモリとストレージについて、その違いから性能の見方、用途別のおすすめまでを紹介してきましたがいかがだったでしょうか?

ここではメモリとストレージについての解説を行いましたが、それ以外にも、CPUやGPUなど様々なPCパーツがあります。その他のPCパーツについても詳しく知りたいという方は、以下の記事で紹介しているのでそちらを参考にしてください。

また、実際にパソコンの購入を検討しているという方は、以下の記事で用途別のおすすめノートパソコンを紹介しています。

 

この記事の監修協力
@ツノシカ
応用情報処理技術者、ITストラテジスト。元IT系プロジェクトマネージャで半導体やマイクロプロセッサ等のハードウェアから会計システムやクラウドシステムといったソフトウェアまでの開発経験あり。現在は、IT系コラムの執筆や中小企業に対してのITシステムのコンサルティングを行っている。

 

この記事の執筆者

きつね
きつね